この記事を書いた人
司法書士 太田徹
(所属会)愛知県司法書士会 会員番号2133・簡裁訴訟代理等関係業務 認定番号第1801503号・一般社団法人日本財産管理協会
(経歴)愛知県豊橋市、太田合同事務所代表司法書士。2018年司法書士登録後、司法書士法人で業務に従事し、2022年太田合同事務所を開設。『地域・思いやり✖︎webオンライン密着✖︎充実した情報』をモットーに、司法書士業務と共にWebメディア運営にも取り組んでいる。
(趣味)サッカー観戦(セリエA、プレミア、Jリーグ、ゲームでフットボールマネージャー)、子供と遊ぶこと(娘が2人います)
公正証書遺言ってなに?~最期の意思をしっかり残す方法~
遺言書には、いくつかの種類があります。
一般的によく利用されているのが「公正証書遺言」「自筆証書遺言」の2種類です。
公正証書遺言は公証役場という公的機関で作成する遺言書で、公証人が遺言内容について証明を与えてくれます。公証人は、公務員扱いの立場ですので、公正証書遺言は公文書として扱われることになります。
公文書は、文書の成立について真正であるとの強い推定(形式的証明力)が働きます。公正証書は、極めて強力な証拠力を持つことになります。
民事訴訟法228条2項
公証役場HP 公正証書とは
上述の通り、公正証書遺言は強い証拠力がありますので、自筆証書遺言よりも安全で確実な遺言書と言えます。
原本は公証役場で保管されますし、遺言内容に関しても公証人の証明が入っていますので、偽造、紛失のリスクはほとんどありません。
豊橋市・豊川市・湖西市・浜松市で公正証書遺言を作成するのであれば、以下の公証役場があります。
豊橋公証人合同役場
新城公証役場
浜松公証人合同役場
こんな方におすすめ|公正証書遺言が向いている人
「争族」という言葉がある通り、相続をきっかけに家族の間に溝が出来てしまうということは、珍しいことではありません。遺言書があれば、亡くなった人の意思を尊重しつつ、ある程度納得感を持って手続きを進めていくことができます。
やはり遺言者の言葉は重みがありますので、遺言書を無碍にする人はいないと思います。
日本は持ち家主義の文化ですので、該当する方は多いかと思いますが、不動産をお持ちだったり、預貯金を複数口座持っているような場合には、遺言書を作成するメリットは大きいでしょう。
特に不動産のような固定資産は、税金などの維持費もかかり、引き継ぐからといって、決してメリットだけがあるわけではありません。特に地方にお住いの地主さんの場合には、農地や山林などあまり資産価値の高くない不動産をお持ちというケースもありますので、誰が引き継ぐかを明確にするという意味でも遺言書は効果的でしょう。
ご夫婦だけで住まわれているということは、いずれそのお家は誰も管理をする人がいなくなってしまいます。遺言書を作成しておけば、元気なうちに不動産を引き継ぐ人が明確になります。生前から不動産を管理するうえでの伝えるべきことなども伝えやすくなりますし、引き継ぐ人としても安心ではないでしょうか。

当事務所で過去に遺言書を作成された方も上述のような状況の方が多いです。
もちろん上述のような方でなくとも、遺言書を作成すること自体は将来の相続手続きをスムーズに進める大きな役割があります。
公正証書遺言を作ると何が安心なの?
公正証書遺言を作成すると、具体的にはどのようなことが安心になるのでしょうか。
説明していきます。
残された家族が相続手続きで困らない
上述の向いている人にも共通することですが、公正証書遺言があるということは、相続資産の引き継ぎ先が事前に決められているということです。
遺言書があれば、相続が発生した後も手続きはスムーズに進みやすくなるでしょうし、遺産分割協議の必要がありませんので、相続人間で揉めるリスクも大幅に減るでしょう。
子供たちが平等に受け取れるようにできる
遺言書の内容は、遺言者が自由に決めることができますので、こうしなければいけないというような決まりはありません。
子供全員に対して、平等に資産を残したいのであればそのように作成することもできます。
介護や面倒を見てくれた子への気持ちも形にできる
面倒を見てくれた子に対して、資産を多く渡したいという気持ちになるのは、当然のことだとは思いますが、遺言書にはもう一つ重要な要素があります。
附言事項といって、法的に効力はないけれど、残されたひとへのメッセージを書ける部分です。
資産を渡すことで気持ちを表すのも当然ですが、附言事項を活用して気持ちを表すこともできます。

当事務所でも「家族へ宛てた手紙だと思って考えてみてください」とお伝えして、気軽な気持ちで附言事項を考えていただくようにしています。
実際の流れを知っておこう!初めてでも安心の5STEP
財産と相続関係を把握する
遺言書を作成するにあたって、遺言書に記載する(遺言の対象になる)資産を把握しておきましょう。
把握が曖昧だと、せっかく遺言書を作成しても「あの財産も遺言に載せておけばよかった」なんてことにならないはずです。
また相続関係を把握することで、遺言書を作成することで利害関係がある人がだれなのか事前に伝えておいた方が良いのかなど配慮ができるようになります。
司法書士などに相談する
遺言書を作成するうえで、注意すべきことなどを法律の専門家に相談するようにしましょう。
思わぬ落とし穴があることもあります。
遺言書を作成した後でも再度作り直しはできますが、費用がかかりますし手間も増えるので二度手間にならないようにするためにも、事前相談は必須です。
遺言内容をまとめる
遺言内容は、遺言者の希望はもちろんですが、法的なリスクがないかなどの法律的視点、ご夫婦で遺言書を残す場合には2次相続を考えた内容など複数の角度から検討する必要があります。
公証役場で作成、署名
公正証書遺言は予約した公証役場で作成します。遺言者が公証役場に出向けない場合には公証人が出張してくれることもありますが、別途出張費がかかりますので注意が必要です。作成の際には、証人2名が必要になり、遺言者とともに署名押印をします。
自分用と家族用でコピーを保管
公正証書遺言は、公証役場で遺言者の死亡後50年、証書作成後140年または遺言者の生後170年間保存する取扱いとなっています。作成時に正本と謄本をくれますので、それぞれ自分用と家族用で保管をすることをお勧めします。

遺言内容にもよりますが、ご相談いただいてから早ければ、2ヶ月以内には完成するということもあります。詳しくは、当サイト「紡ぎ」や最寄りの専門家へお問合せください
費用ってどれくらい?|公正証書遺言の作成にかかるお金
公正証書遺言を作成する際にかかる費用はどの程度でしょうか?
確認していきましょう。
公証役場に支払う費用
公証役場に支払う手数料は、遺言書の対象になっている資産額、資産を受け取る人の数に応じて変わります。
例えば、資産額が1000万円を超え3000万円以下でお一人が資産を受け取る場合には、おおよそ3万5千円程度になります。
司法書士などの専門家へ依頼した場合の費用
専門家へ依頼した場合には、遺言書の文案作成や公証役場とのやり取りなど行ってくれますが費用が発生ましす。上述の例ですと、おおよそ15万円程度の費用が発生します。
※事務所によって異なります
夫婦で作る場合どうなる?
ご夫婦で公正証書遺言を作成した場合には、上述の費用が2人分と考えてもらえれば良いでしょう。
ですので40万円近くの費用がかかることになります。
よくある心配ごとQ&A
- 子供たちに秘密にしていても大丈夫?
- 遺言書を作成する際に、子供などに伝える義務はありませんが、将来の相続手続きで利用してもらえるように伝えておいた方が無難です
- 途中で内容を変更したくなったら?
- 遺言書は一度作成しても、撤回などができますので、後から内容を変更することは可能です(民法1022条、1023条)
- 夫と一緒に作って意味はあるの?
- あります。仮にご夫婦のうちのどちらかだけが相手に資産を渡すという内容で、遺言書を作成している場合には、万が一遺言書を作成していた人より先に受け取る予定の人が亡くなってしまったなどの事態が起きると、その遺言書は手続きで使用できないものになります。ですので配偶者のいる方は一緒に作ることをお勧めします。
地元で安心して相談できる場所は?
豊橋市、豊川市、湖西市、浜松市エリアの公証役場は以下の通りです
より細かな相続対策、生前対策をしたいのなら、法律専門職に相談してみましょう。
司法書士太田合同事務所が運営する当サイト(紡ぎ)では、遺言書だけでなく後見や信託など数ある生前対策の中から相談者にとってより最適な制度を提案します。
まとめ|「ちゃんとしておきたい」あなたへ
遺言書を始めとした、生前対策はいつでもできるが、なかなか重い腰が上がらない独特なものです。
今はまだ元気だからいいかな・・・と思っていても何か(認知症、病気など)があると、したくても出来なくなってしまうものです。
もう少し早く相談に来てくれれば、提案できることはたくさんあったのにな、と思う方は過去にたくさんいました。いまこそ準備することで、将来家族が助かるかもしれません。
まずは初めの一歩を踏み出せば、司法書士などの専門家がサポートしますので、思い立ったが吉日で問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。