法定相続人が一人もいない場合、何も対策をしなければ、あなたの財産は最終的に国のものになります。また、身元保証人がいないことを理由に、老人ホームへの入所を断られるケースもあります。
しかし、いずれも生前の対策次第で回避できます。このページでは、相続人がいない方が直面しやすい2つの不安「財産の行方」と「施設入所」について、具体的な対策方法を解説します。
相続人がいない場合、何も対策をしないと財産はどうなるか?
結論から言うと、法定相続人が一人もいない場合、財産は相続財産清算人による清算手続きを経て、最終的に国庫に帰属します。この結論自体は不動産・預金・株式のいずれも共通ですが、清算までの過程で生じる問題は資産の種類によって異なります。
清算手続きの大まかな流れ
- 家庭裁判所が相続財産清算人を選任する
- 官報で公告し、債権者や受遺者からの申し出を受け付ける。公告を6か月以上の期間を定めて行います。
- 特別縁故者(内縁の配偶者、療養看護に努めた人など)がいれば、家庭裁判所に財産分与を申し立てることができる
- 分与されなかった残りの財産が国庫に帰属する
不動産の場合
清算人が選任されるまでの間、誰も管理する人がいない状態が続きます。
空き家として放置されれば老朽化や近隣トラブルのリスクが生じますし、その間の固定資産税の扱いも問題になります。
また土地の管理義務の問題も生じる可能性があるため、注意が必要です。
最終的には清算人が不動産を売却(換価)し、金銭に換えたうえで国庫に帰属させる流れになりますが、買い手が見つかりにくい物件では売却に時間がかかることもあります。
預貯金の場合
相続人がいないことが金融機関に伝わると、口座は凍結されます。清算人が選任されるまでは誰も引き出すことができません。
株式の場合
証券口座も同様に凍結されます。上場株式であれば清算人が売却して換価しますが、非上場株式は買い手が見つからず、処理が難航する可能性があります。
資産の種類にかかわらず、「対策をしなければ最終的に国が受け取ることになる」という結論は共通ですが、資産構成が複雑・多様なほど清算手続きは長期化しやすくなります。次の章で、これを避けるための具体的な対策を説明します。
財産を望む相手に残すための対策(遺言・遺贈)
結論から言うと、公正証書遺言で遺贈先を指定すれば、不動産・預金・株式などいずれの財産も、望む相手に残すことができます。ただし、資産の種類によって手続きや注意点が異なります。
なぜ公正証書遺言が推奨されるか
公正証書遺言は公証人が作成に関与するため、自筆証書遺言に比べて証明力(内容の正確性や本人の意思であることが法的に争われにくい強さ)が高くなります。
また、相続が発生した後の手続き面でも違いがあります。
自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所での検認手続きが必要で、検認には亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本や相続人全員の戸籍など、多くの書類を集める必要があります。
これは法務局で遺言書を保管する「自筆証書遺言保管制度」でも同じように、亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本や相続人全員の戸籍が必要になります。
一方、公正証書遺言は、相続発生後に必要な書類収集の手間・費用を抑えることができます。
特に相続人がいない場合、この書類収集を代わりに進めてくれる身近な人がいない可能性が高いため、公正証書遺言によってあらかじめ手続きの負担自体を減らしておくことの意味は大きくなります。
不動産の場合
遺贈によって不動産の名義を変更するには、遺贈による所有権移転登記が必要です。相続人以外への遺贈は、相続人への遺贈・相続に比べて登録免許税の税率が高くなります。
また、受遺者が相続人以外の場合、不動産取得税が課されることがあります。(地方税法73条の7第1号)
相続人がいない場合、この登記手続きを確実に進めるために、遺言執行者の指定が実務上ほぼ必須になります。
預貯金の場合
遺言執行者がいれば、金融機関での解約・払い戻し手続きを遺言執行者単独で進めることができます。遺言執行者がいない場合、相続人不在の状況では清算人選任等の手続きを経る必要があり、時間がかかります。
株式の場合
上場株式は証券会社での移管手続きが必要です。非上場株式は、発行会社への名義書換請求が必要になります。
資産の種類が複数にまたがる方ほど、遺言執行者の指定と公正証書遺言の重要性が増します。
身元保証人がいなくても老人ホームに入所できるか?
結論から言うと、身元保証人については、当事務所が提携するNPO法人への依頼を基本的な解決策としてご案内しています。
あわせて生前対策(任意後見契約・死後事務委任契約など)を整えることで、施設入所や入院時の不安全体に対応できます。
施設や病院が身元保証人に求める役割
- 緊急時の連絡先になる
- 費用が未払いになった場合に対応する
- 入院や手術の際に必要な判断を行う
- 亡くなった際に身柄や残置物を引き取る
これらの役割のうち、「身元保証人としての引き受け」自体は、当事務所が提携するNPO法人が担います。一方、「判断能力が低下したときの財産管理」「亡くなった後の事務手続き」は、生前対策の各契約(任意後見契約・死後事務委任契約など)によって備えることができ、こちらは当事務所が契約の整備・実行をサポートします。
身元保証(NPO法人)と生前対策(当事務所)は担う主体が異なりますが、どちらも欠けると施設入所や万一の際に困る場面が出てきます。当事務所では、この2つを組み合わせてご案内し、窓口としてご相談に対応しています。
おひとり様が検討すべき生前対策制度の組み合わせ
結論から言うと、おひとり様の生前対策は、単一の制度で完結するものではなく、複数の制度を組み合わせるのが基本です。
| 制度 | 主な役割 |
|---|---|
| 見守り契約 | 定期的な連絡・訪問で生活状況を確認する |
| 財産管理契約 | 判断能力があるうちの財産管理を委任する |
| 任意後見契約 | 判断能力が低下した後の財産管理・身上保護を委任する |
| 公正証書遺言 | 財産を望む相手に確実に残す |
| 死後事務委任契約 | 亡くなった後の事務手続き(葬儀・納骨・各種解約等)を委任する |
それぞれの制度の詳しい内容・費用については、各解説ページをご覧ください。判断能力がある今の段階から亡くなった後まで、切れ目なく備えられるのがこの組み合わせの特徴です。





対策にかかる費用の目安
結論から言うと、公正証書遺言・任意後見契約・死後事務委任契約を組み合わせた場合、契約時の初期費用に加えて、任意後見の継続費用(月額)、死後事務委任契約の預託金・実行時費用が発生します。
具体的な金額は各制度の料金ページに掲載していますが、複数の制度を組み合わせる場合の総額の目安について、正式な見積もりをご希望の方はご相談ください。
対策を始めるタイミングと進め方
結論から言うと、対策を始められるのは判断能力があるうちだけです。
任意後見契約や遺言の作成は、判断能力が低下してからでは行えません。
- 現在の資産状況・希望を整理する
- 専門家に相談し、必要な制度の組み合わせを検討する
- 契約書・遺言を作成する(公正証書での作成を推奨)
- 定期的に内容を見直す
よくあるご質問
親しい友人や内縁のパートナーに財産を残すことはできますか?
認知症の親の介護で苦労した経験があり、自分は誰にも迷惑をかけたくないのですが、何を優先すべきですか?
施設探しと生前対策、どちらを先に進めるべきですか?
遺言執行者は誰に頼めばいいですか?
まとめ
法定相続人がいなくても、生前の対策によって「財産を望む相手に残す」「身元保証人なしで施設に入所する」ことは可能です。
当事務所では、公正証書遺言・任意後見契約・死後事務委任契約などの組み合わせと、提携先NPO法人による身元保証をあわせてご案内しています。
ご自身の資産状況やご希望に応じた対策について、お気軽にご相談ください。
まずは資料でじっくりご検討したい方へ
家族信託・遺言書・任意後見など、生前対策の基本をまとめた資料を無料でご用意しています。今すぐの相談ではなく、まずご自身のペースで内容を確認されたい方はご活用ください。
紡ぎ|生前対策専門サイト
